なにをするにも、お金がかかる

04.じんせいのこと
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昨年の秋から、仕事をしていない。仕事をしていないのだが、前職の会社からはいろいろとご厚意をいただいており、当面の暮らしには困っていない。困らないはずだった。

無職の経験がある方なら、おわかりになるだろうが、とにかく時間が有り余っている。朝起きてから夜寝るまで、前向きな言い方をすれば、なにをしていてもいい。

ただ、有り余る時間を「はいどうぞ」と与えられても、案外なにをしたらいいか、思いつかない。起業家やアーティストの方々なら、自分のやりたいことに、迷わず全霊で取り掛かるのだろう。しかし、私はといえば、なんの理念も信念も意志もない。凡庸どころか、平均以下の一個人である。

「好きなように使っていい時間」を前にして、まずやったことといえば「好きなだけ眠る」だった。

ちょうど持病の双極性障害(躁うつ病)でガツン! と体調を崩しており、睡眠のリズムも不規則になっていた。なので、会社をやめて、毎日の出勤のことを気にせず、好きなだけ眠れるのは、幸せなことだった。家事も妻に任せきりだったから、このころは食事・睡眠・排泄と、まるであかちゃんのような生活をしていた。

1ヶ月間くらいあかちゃんになって、調子がよくなってきたら、今度は下町酒場オジサンになった。夕方に起きてお酒を飲みに出掛け、夜中まで飲み、また夕方まで寝る生活。

一晩飲みに行くと、だいたい数千円から、多い日は一万円程度を支出する。それを、ほぼ毎日なので、月の収支が大変なことになっていた。仕事をしていない、お酒を飲んでいる場合じゃないのに、お酒がやめられず、お酒の飲み過ぎで、生活がアル中っぽくなっていた。

平成最後の年明けに、妻から切実な指摘を受けて、お酒をやめた。お酒、生きがいに近かったので、はじめは「お酒を飲めないなら、生きてる意味がないな~」みたいなことを考えていたが、案外なんの苦労もなくやめられた。

お酒をやめたら、生活が朝型になった。なんか、人間性を取り戻したような気分だった。早起きしてすることといえば、喫茶店へ行くくらいしかないのだが。

あと、お酒をやめる以前は、毎月二桁万円の赤字だったのが、お酒をやめてからは、単月収支トントンになり、翌月には黒字化した。

それまでは「お金がなくなっちゃう~」なんて悲鳴を上げながら、お金がないストレスをごまかすためにお酒を飲むという、意味不明なサイクルだったので、金欠のストレスから解放されたのは、素直にうれしかった。

この勢いで(?)、スポーツジムを契約した。ジムに通い始めたら、ブヨブヨにたるんでいた身体が、徐々に引き締まってきて、ますます人間らしくなってきた。

ジムを契約したら、また収支が不安になってきたので、ジム代を捻出するために、タバコをやめてみた。こっちは、特に外的な変化を感じることはないけど、今までのように飲食店の喫煙可否を気にしなくても済むのは、よい。

以前は、お酒とタバコを中心にお金を使っていた。最近は、ジムと喫茶店にシフトしている。金額は詳しく書かないけど、以前はお酒の出費がとにかく青天井だったので、それがなくなったぶん、支出は大幅に抑えられている。

ただ、もっと支出を抑えたい。節約の快楽にハマってしまった。お金を使わないことが、こんなに気持ちいいことだと、生まれてはじめて知った。

それまでは、タバコを買いにコンビニへ行くついでに、こまごまとした浪費を繰り返していた。しかし、タバコをやめたら、そういう浪費がなくなった。外食もやめて、自炊の回数をグッと増やした。最近は、交通費の節約、およびさらなる浪費の抑制のために、不要不急の外出を止めている。

しかし、もっと節約したい。ジムは月額会費制だから、どうしようもない。ただ、毎日の喫茶費は、まだ削ることができる。最近は、ジム帰りに近所の喫茶店へ寄るのがルーチンになっている。このルーチンを、他のなにかで代用したい。

コーヒーを淹れるのが趣味なので、コーヒーなら自宅でも飲める。なんなら、ソーダの素とアイスクリームもあるから、自宅でクリームソーダも作れる。喫茶店でコーヒーを飲めば400円だが、家で淹れれば……などと、さもしいことを考えてしまう。

お金のかからない娯楽を探しているが、これが案外少ない。なにをするにも、お金がかかる。たとえば、趣味の短歌を詠むのはタダだ。ただ、家に引きこもって、なにもない状態から詠めというのは、私には厳しい。なにかしら、外からのインプットが要る。

たまに、歌人のトークライブとかにも行くんだけど、やはりお金がかかる。歌集は、買うとメチャクチャ高い。数千円する。図書館へ行けばタダなんだけど、図書館へ行くのが面倒くさい。

「散歩」よく勧められるんだけど、散歩したら、結局寄り道してしまうんだよな。喫茶店、古本屋、古着屋とか、なんらか消費活動に走ってしまう。なにもせず、ただ歩いているのは寂しい。

遠くまで歩いて行って、また歩いて帰ってくるだけなら、ジムのトレッドミル(ウォーキングマシン)で十分だ。街並みを見物するのは、あまり好きじゃない。東京の街並みは、情報過多で疲れてしまう。

「ジム」厳密には無料ではないが、何度行ってもOKだ。でも、正直、身体を動かすのってあんまり好きじゃない。気分はいいし、身体にもいいのもわかってる。だけど、ダルい。

汗をかくのも、好きじゃない。ウェイトに挑戦してみたいが、生まれつき片腕が不自由なので、ちょっとむずかしい。今のところ「健康維持のため」以上のモチベーションがわかない。

「読書」は、どうだろう。自宅には、本がたくさんあるから、その気になれば多分1年くらいはヒマつぶしできる。昔から読書は大好きだったし、今は詩歌の本を読むのにも興味がある。

でも、最近活字が頭に入ってこないんだよな。双極性障害のせいか、向精神薬のせいか、よくわからないけど、ここ5年くらい、まともに本を読めていない。あと、自宅で読書していると、知らないあいだにベッドでTwitterをしているな(?)。

最近は、ファミレスにハマっている。妻とケンカして、自宅に居場所がないとき。眠れないとき。なんとなく世の中に所在がないとき。ファミレスへ逃げ込む。ドリンクバーだけじゃなくて、もう一品は必ず注文するのが、私の安い哲学……。

ファミレスへ行くのは、主に深夜なんだけど、いろんな人が来る。オジサンのひとり客、私とおなじく、家に居場所がないのかな……オタクの集団、夜に出歩くな、もっと日光を浴びろ……オバサンのグループ、夜なのに、とにかくうるさい……昨日は、となりの席で、若いカップルがマンションを買う相談をしていて、とてもエモかった……みんな頑張れ、いろんな人生がある。タダではないが、感じるものは多い。感じるものは多いが、タダではないんだ……。

繰り返すけど、なにをするにも、お金がかかる。

中島らもが「『教養』とは学歴のことではなく、ひとりで時間をつぶす能力のことを言うのだ」「教養のない奴は、お酒を飲むくらいしかやることがない」みたいなことを言っていたが……心から同意する。そして、私には、教養がない。

お酒をやめる前は、お酒ばかり飲んでいた。お酒をやめてからは、することがなくなってしまった。お酒の代用品として思いつくものといえば、お酒と同様に、お金のかかる娯楽ばかり。街へ出ても、酒場に入らないかわりに、別の場所でお金を使ってしまう。お金のかからない娯楽を血眼になって探しているが、どうにもこうにも、見つからない。

お金のかからない娯楽、私にはひとつ「文芸創作」という、強い手札がある。短歌だけでなく、小説・随筆など。文章を書くのは、昔から好きだったし、今でも楽しい。「書く」といっても、現代ではパソコン、あるいはスマホでも「書く」ことができるから、時や場所を選ぶわけではないし、元手もかからない。なんなら、終日ベッドに横たわったまま、詩歌などを書いて、時間をつぶすこともできる。

でも、自宅にひきこもってるだけだと、やっぱり上手く書けないんだよな。発想や視角が、まったく広がらない。なにより、書いていて楽しくない。楽しくなくちゃ、娯楽とは言えないだろう。

楽しく書こうとすると、いろいろな体験や経験、人との出会いや対話などが必要になってくる。そういう「外界からの刺激」を得るためには、またお金がかかる。

これからは、なんとか「文芸創作」を、文章を書くことを趣味として、楽しんでいきたい。趣味にかかる必要経費として、ある程度の支出は許容したいが……私も、中島らもが言うところの「教養人」になりたいものである。

お金、限られているので、合理的かつ効果的に使っていかなければならない。なにをもって「合理的」「効果的」とするかはむずかしいが……ひとつは、なにをおいても健康の回復・維持を第一にしたい。楽しい趣味も、健康な精神と身体があってこそである。

第二には、社会復帰やスキル向上に関わるようなことに、お金を使っていきたい。なんだかんだ言っても、早く社会復帰したい。それに、孟子に曰く「恒産なくして恒心なし」安定継続した暮らしが確保できなければ、趣味を楽しむどころではない。

上記2つが確保できたら、そのあとで、文芸創作にお金を使いたい。残念ながら、文芸創作の優先順位は、3番目くらいだと思う。っていうか、将来のことを真剣に考えたら、3番目くらいにせざるを得ない。

双極性障害で調子を崩していて、生活もままならない期間がある。仕事をしていないからといって、時間が無限にあるというわけではない。お金と時間を、効率的に投資していくことを心がけていかないと……。

と、ここまで考えていて、本当にウンザリしてきた。だいたい哀れな病身なのに、なんでこんなカツカツ考えて生活しなきゃいけないんだ。「死ななきゃいいや」くらいの、アバウトな感じでやっていくぞ、私は。

最近も、マジメに所得税・住民税を納税したら、口座残高の1/4くらいがフワッと消えて、本当にビックリした。税金って、なんなんだろう。いやいやいや、私もいい大人だから、本気で「税金って、なんなんだろう」とは思わない。しかし、先月はマジで「日本国と東京都に殺される!」そう思った。

私は、元銀行員なんだけど、銀行員には自己破産者が多い。他人の金勘定ばかりしてると、自分の金勘定ができなくなると、昔の上司が言っていた。なるほどな~私も、自分の金勘定は苦手だ。さすがに、自己破産はしたことがないが、昔使っていた自社カードローンの枠は、いつも全力で限度額までパンパンの優良顧客だった。ハハハ。なに笑ってんだ。

これくらいの感覚で生きているから、正直いつ生活できなくなるか、路頭に迷って死ぬかわからない。いやいや、死にたくはない。死にたくないっていうか、死ねない。私ひとりならともかく、今は妻も一緒だし。本当にちゃんとしたいんだけど、全然ちゃんとできない。誰か助けてくれ。

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