身体をいたわること

04.じんせいのこと
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最近、家のなかでも、必ず靴下をはくようにしている。「だからなんだ」って話なんだけど、11月も後半に差しかかっており、寒くて冷えるので、靴下をはいている。特に、手足の末端が冷える。今も指先がかじかんで、まともにタイピングできていない。爪は、薄暗い紫色に変色していて、非常に具合が悪そうに見える。

足は、なおさらである。いくらエアコンを効かせたところで、床は冷たい。冷めたコンクリートの温度が、そのまま伝わってくるし、そこから体温を奪われていく。なので、靴下をはく。

冬場の健康管理について、以前は大して気にかけたことがなかった。もともと、比較的寒い地方の出身だし、地元の寒さと比べたら、東京の寒さなんてたかが知れている(地元の寒さとは、違う寒さはあるが)。バカなので、夏風邪はひくが、バカなので、冬の風邪はあまりひいたことがない。

インフルエンザとも、小学生のころ以来、無縁である。妻からは「予防接種をしなさい」としつこく言われているが、インフルエンザによるしんどさの記憶がおぼろげなため、どうも危機感がわいてこない。東京は大して雪も降らないし、冬は寒ささえ耐えしのげば大丈夫、その程度にしか考えていなかった。

ところが、ここ何年か、特に30代に入ったあたりから、冬場に体調を崩すことが多くなった。ひとつは、持病の双極性障害(躁うつ病)に由来するもの。冬場になると、うつ症状が深刻化・長期化しやすくなった気がする。以前勤めていた会社でも、冬場に症状が悪くなって、長めのお休みを頂いたことがある。

ふたつ、単純に身体の具合が悪くなる。うつ状態の気怠さと、それ以外の気怠さ、文章で説明するのはむずかしいが、明確なうつ状態でないときでも、なんとなく気怠さを感じる。手足の冷えも、ひどい。手足が冷えすぎて、妻からは「冷たいから触るな」と言われるくらい、ひどい。動きが鈍くなるし、関節も固くなる感じがする。風邪もひくようになったし、インフルエンザにかかるのも時間の問題な気がする。

「まだ」30代ととらえるか、「もう」30代ととらえるか、それは個々人の考え方によるだろうけど、私としては「いよいよムリが効かなくなってきたな」と思っている。今でも、年に数回くらいは徹夜で遊んだりもするが、だいたい翌日は使い物にならなくなるし、体力回復にも時間がかかるようになった。10年くらい前、20代前半のころは、夜通し酒を飲んでから会社へ行っていたことを思うと、隔世の感がある。

若さとか、元気とか、気力とか、勢いとか、気合とか、そういうものに頼れなくなってきた。まさしく「身体一つ」になってきた感じがする。その身体もポンコツなので、たまったものではないが……ともかく、ちゃんと自己管理をしていないと、すぐガタがくる。

正直、身体がここまで劇的に変化するとは、思っていなかった。そりゃ私だって人間だから、いずれおとろえはするんだろうと思ってはいた。しかし、徐々におとろえてくると思っていたのが、階段状に急激に衰えてきたので、ビックリした。

加齢、認めたくないですよね。私は絶対に認めたくなかったので、「最近、なんかキツいかも……」と思いつつも、生活習慣を是正することは、絶対にしなかった。そしたら、身体がダメになった。もしこのとき、上手く生活のバランスを整えることができていたら……そう考えることは、今でもあるが、後の祭りだ。

前職の会社を退職したいちばんの理由、双極性障害のうつ症状なんだけど、それ以前に、身体の衰えと、生活習慣のミスマッチがあったと思う。身体は、年を経るごとに衰えていっている。それなのに、いつまでも20代前半の気分で、毎日遅くまで飲み歩いてたり、ラーメンばっかり食べてたりしたら、そりゃガタがくるでしょう。

毎年の健康診断の数値には、身体の衰えがあからさまに現れていた。保健指導も受けていたし、保険医さんからは「早く通院しろ」とまで言われていたのだが、すべて無視してしまっていた。ダメになってから、やっと気づいた。バカなので。

というわけで、最近は、歳相応に健康に気を使っている。酒をやめる。ジムへ通う。身体を冷やさない。日光を浴びて外気に触れる。手洗い・うがいをちゃんとする。ラーメンは控える。野菜を食べる。夜ふかしをしない。ヒゲを剃ったあとは、保湿液を塗る。姿勢を正す。などなど。すべて妻に言われて、イヤイヤやっていることだが、やっていることはやっている。

こうしたセルフケア、やってみると、すごく面倒くさい。正直に言えば、野菜よりラーメンを食べたい。冬でも、部屋では半裸で過ごしたい。夜ふかししたい。いちいち細かいことに気を使うのはわずらわしいし、手洗い・うがいはしょっちゅう忘れる。今思い出したが、今日も忘れている。

めんどくさいと思う反面、非常に愛おしい作業でもある。なんだろう、機械とか車とかが好きな人にはわかるかもしれないんだけど、手間がかかるものほどかわいい、みたいな、セルフケアをしているときには、そんな感覚におちいる。30年間ほったらかしていたので、もうあちこちボロボロなのだけど、ボロボロになった機械をていねいにメンテナンスしていくような、一種のやりがいがある。

昔から自分のことには無頓着だったのだが、セルフケアを始めてからは、自分に対して、多少の関心を払うことができるようになった。今日は調子がいいとか、今日は調子が悪いとか、その程度のザックリとしたことだが、今まではその程度のことすら気づかなかった。あるいは、黙殺していた。なので、これは大きな進歩だと思う。

 私が若さひとつで乗り切れることって、体力的にも世間的にも、もうないんだろうなあ。実際、もう若くはないし。若くはないが、なにも成していない我が身を顧みると、しみじみ悲しくなる。ともあれ、人生は続いていく。あと何年か、何十年かはわからないけど、死ぬまでずっと生きていく。

仕事をしていない今の状況は、けっこう幸せだ。でも、いつまでも今の暮らしは続けていられないし、それに男として、あと一回くらいはチャンスがほしいという気持ちもある。いざチャンスが来たとして、そんなときに調子を崩していたら、目も当てられない。いつかはわからないけど、いつか来るその日にそなえて、今日も家で靴下を履いている。

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