精神科・心療内科の3分診療

03.精神障害のこと
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「3分診療」病院の診察時間の短さを揶揄して使われる言葉である。揶揄してるんだけど、実際に病院の診察時間って、3分くらいですよね。私が通っている精神科でも、だいたい3分前後で診察が終わる。

私は、双極性障害(躁うつ病)という精神障害を持っていて、かれこれ10年ほど、精神科・心療内科へ通い続けている。双極性障害、日ごと、週ごとに、気分がコロコロ変わる。不調の内容も、コロコロ変わる。

3分、たった3分で、自身の不調の変化をお医者さんに伝えることは、とてもむずかしい。最近の不調っぷりをつらつらと述べているうちに、3分経ってしまう。

「最近の気分はどうですか?」

「気分がふさいでェ、憂鬱でェ、気だるくてェ、眠れなくてェ……」

「変わりないですネ、いつものお薬を飲んで様子を見ましょうネ」

だいたい、毎回こんな感じで、診察が終わる。年がら年じゅう、なにかしら精神の調子が悪い。なので、不調の変化、不調の機微を3分で伝えるのが、なかなかむずかしい。

毎回毎回、出たとこ勝負じゃムリだと気づいた。なので、最近は、気分の変化をモニタリングする・変化の内容をまとめる・メモしてお医者さんに渡すなどしている。そうしたら、おなじ3分診療でも、診察の中身が具体的になってきた。

「3分診療」について、文句を言っている人は多い。私も、かなり不満である。ただ、現行の診療報酬制度だと、短時間で多くの患者を診察しなければならないので、致し方ない部分もある。お医者さんの肩を持つわけではないけど、お医者さんにも生活があるわけで。

あと、精神科・心療内科にかかっている人の話を聞いていると、「お医者さんが、ちゃんと話を聞いてくれない」という声を耳にすることが、たまにある。それはまあ、ゆゆしき事態なのだけど。そもそも患者さんが、なんの「話」をお医者さんにしようとしているかが問題である。

心身の不調、薬が合う合わないについての話であれば、お医者さんの守備範囲内なので、「そこはちゃんと聞いてやりなよ~」と思う。ただ、少なくない患者さんが、精神科医や心療内科医に対して「心理的アプローチ」「心理療法」「私的なお話をすること」を期待しているように感じている。しかし、残念ですがソレはお門違いだよと、私は言いたい。

私は、10年くらいずっと、双極性障害のケアをしている。10年のなかで、薬物療法・心理療法を受けて、なんとなくわかったこと。精神科医・心療内科医というのは、あくまで「薬物療法のスペシャリスト」であるということ。そして、「心理療法」のスペシャリストは、お医者さんとは別にいるということ。

一昨年までは、薬物療法だけで治療を続けてきた。体調は、よくなったり悪くなったり。薬も、効いたり効かなかったり。診察時間は、毎回3分。3分では、やはりちゃんとしたケアはできない。不調のときは、そのつど薬の処方を変えて、対症療法的にケアをしていた。

そんな感じでケアを続けていたら、一昨年にいきなりガクッと体調を崩して、なすすべもなく会社をやめるハメになった。「このままのケアの仕方じゃいけない!」そう思って、一昨年から、カウンセリングを受け始めた。1コマ45分。45分使って、私の障害や人生についての話をする。

話し相手は、臨床心理士の先生。お医者さんではないけど、精神疾患・精神障害に詳しく、症状のケアの仕方や、障害との付き合い方を教えてくれる。というか、一緒に考えてくれる。

カウンセリングに対して、はじめはとても懐疑的だった。「コレ、本当に意味あんのかな……」と思いながら受けていた。しかし、半年ほどカウンセリングを受け続けて「なるほど!」という感じになってきた。

カウンセラーさんとの信頼が形成されてくるにつれて、いろんな話をするようになる。ものの感じ方・捉え方。小さいころは、どんな子どもだったか。なにが好きで、なにがイヤか。仕事は楽しかったか。いま、なにに悩んでいるか。などなど。そして「コレぜんぶ、診察時間にお医者さんへ話したかったことだ!」と気づいた。コレがいわゆる「心理療法」だった。

診察は3分だが、カウンセリングは45分あるので、いろんなことを、ゆっくり話せる。よもやま話で、楽しく終わることもある。過去のつらいことを思い出して、メソメソすることもある。イヤなことを思い出して、キレることもある。カウンセラーさんは、それを冷静に受け止めてくれる。

話しているうちに、認知がシャキッとしてくる。認知がシャキッと? 自分でもよくわからないけど、とにかく「私はこれが好き」「私はこれがイヤ」「私はこうしたい」「私はこうありたい」みたいなものが、徐々にハッキリと見えてくるようになる。

カウンセリングを受けることで、お医者さんとの3分の診察時間では話せなかったことを、すべて話すことができるようになった。私のカウンセラーさん、すごくふところが深くて、初期は「とにかく困ってます! 死にたい!」という状態だったのを、最近は「また働きたい! 生きたい!」という状態まで持っていってくれた。本当にすごい。

コレ、お医者さんの診察にかかってるだけじゃ、ムリだっただろうな~と思う。3分じゃ、時間が足りないし。お医者さんは、心理療法の専門家じゃないし。精神科・心療内科のお医者さんに、心理療法を期待してる人は多いだろうけど、残念ながら畑が違う。ソレは、カウンセラーさんの仕事だ。

精神科・心療内科の「3分診療」は、仕方がない。現行の診療報酬制度が悪いのが、ひとつ。時間をかけたカウンセリングは、お医者さんの専門外なのが、ふたつ。「3分診療」に、心理療法を期待してはいけない。期待は必ず裏切られるので。

自身の疾患・障害のルーツについて、ゆっくり話がしたい。心理療法を受けたい。心理療法が必要だ。そう感じているなら、カウンセリングをオススメする。ただ、万人に対して「カウンセリングを受けましょう!」とオススメすることも、できない……。

理由はふたつ。ひとつめ、カウンセリングは、だいたいの場合、健康保険がきかない。要するに、メチャクチャ高い。ザックリとした相場だけど、1万円/回くらいする。かなり手ひどい出費である。なおかつ、カウンセラーさんとの信頼関係が構築されるまで、長期間にわたって、何度も受ける必要がある。それでいて、やはりカウンセラーさんとの相性がある。その人にとってアタリのカウンセラーさんなら、いい。けど、多分ハズレもいる。

ふたつ。「カウンセラー」という職業自体が、まだそれほど普及しておらず、カウンセリングを受けられる場所・場所が限られる。カウンセラーさん、お医者さんと比べれば、収入も高くないそうで、アチコチかけ持ちして働いているカウンセラーさんが多いようだ。私が通っているクリニックでも、平日の決まった曜日・時間にしか、カウンセリングを受けられない。私は今、療養中なのでなんとか受けられているが、働き出したらムリだった。

精神疾患・精神障害を治療するうえで、薬物療法と心理療法は「車輪の両輪」なんて言われ方もする。薬物療法と心理療法、片方だけではダメで、どちらも必要ということだ。しかし現実は、薬物療法ばかりやっていて、心理療法はやっていない・できない人が多い気がする。

薬物療法だけでも、よくなる人はよくなる。ただ、疾患や障害の原因が、生育歴や外部環境にある場合や、疾患・障害で挫折感を味わっている場合、単に薬を飲むだけでは、あまりよくならない場合も多い。

私の場合、双極性障害になってから、かなりネガティブになってしまっていた。その認知を正すのに、カウンセラーさんの力を借りても、2年かかった。まだ「完全によくなった」とは言えないし。

なので、可能であれば、やはり心理療法は受けたほうがいいと思う。ただ、さっきも書いたけど、高いし、受けられる場所は限られる。心理系の大学とかだと、臨床系の学生が割安でカウンセリングをやってくれるなんて話も聞いたが……真偽や、効果のほどは知らない。

カウンセリング、保険適用になったらいいのにな~と思う。私は受けてみて本当によかった。毎回高いお金を払っているが、払うだけの価値がある。ただ、毎回高いお金を払いたくはないので、保険適用になってほしい。

3分診療・薬物療法だけで、疾患がよくなる・障害をケアできる患者も、まあいるんだろう。ただ、やはり薬物療法と心理療法は「車輪の両輪」、合わせ技でやったほうが効き目はデカいと思う。

あと、「カウンセラー」という職業の地位も上がってほしい。非常に高度な専門職で、臨床心理士や公認心理士になるには大変な苦労が必要なのに、お給料が安いのでは、報われない。カウンセラーの地位が上がれば、もっと気軽にカウンセリングを受けられるようになるとも思うし。

お医者さんは心理療法の専門家ではないので、お医者さんに身の上話やお悩み相談をするのは、やめたほうがいい。意味がないし、なにかを期待をしてもムダだ。3分間で、粛々と心身の不調を伝えよう。3分診療の攻略法、なくはないので、また書きたいけど……お医者さんにアレコレ期待しすぎてはいけない。

身の上話やお悩み相談がしたいなら、圧倒的にカウンセリングをオススメする。カウンセラーさんは、心理療法のスペシャリストだ。当たり外れはあるだろうけど、多分あなたの期待に応えてくれる。ただし高い。

「3分診療」からはだいぶん脱線してしまったけど、私が言いたいのは「3分診療、仕方がない」ということ。お医者さんをかばうわけではないけど、医療のシステム的に「ひとりの患者と向き合う」ようにはできていない。あと、「話を聞くこと」心理療法は、極論お医者さんの仕事ではない。

心理療法を受けたいなら、カウンセリングを受けよう。高いし、面倒だから、あまり強くオススメはできないけど。少なくとも私は、受けてよかったと思っている。

何度も言うけど、薬物療法と心理療法は車輪の両輪で、お医者さんは薬物療法のプロ、カウンセラーさんは心理療法のプロだ。お医者さんの仕事は、体調を診て薬を処方することなので、お医者さんに「話を聞いてもらうこと」「心理療法」を期待するのは、やめよう。必ずガッカリすることになるし、余計な不満も出てくる。

お医者さんだけにかかるなら、薬物療法に専念すると決める。心理療法が必要なら、カウンセリングを頼る。そう割り切ったほうが、精神衛生上もよろしいかと思います。

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