結婚は福祉

05.家庭のこと
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もうすぐ、結婚して3年が経つ。いいことばかりではなかったけど、悪いことばかりでもなかった。

結婚と聞いて思い浮かべること、いくつもあると思う。たとえば、よくありそうなのが「幸せ」とか「人生のゴール」とか、逆に「人生の墓場」とか。まあいろんなことを思い浮かべる、あるいは感じると思う。

私が結婚して3年、まだ3年なんだけど、いま強く感じていること。それは「結婚は福祉」ということである。

私は、双極性障害(躁うつ病)という精神障害と、発達障害(ADHD)を持っている。程度は(たぶん)それほどひどくはないので、寛解期には普通に働くこともできる。直前にいた会社での年収は、600万円弱。30代前半としては、悪くなかったと思う。

ただ、双極性障害とADHDの合わせ技で、気持ちのムラがとても大きい。たとえば仕事、やれるときはメチャクチャやれるんだけど、やれないときは本当にやれない。直前にいた会社も、3年くらいでやれなくなって、やめてしまった。

とにかく気持ちに波がある。やれるときと、やれないときの差が、バカみたいに大きい。いまは仕事をしていないのだけど、これから先どう生きていけば……という気持ちになっている。

そこで、結婚である。

3年前、私の仕事がイケイケだったとき。すこしミエをはって、都心近くで家賃がお高めのマンションを借りた。当時はそれなりに稼いでいたので、家賃負担もたいして気にならなかった。しかし、会社をやめたら、お高めの家賃を払うのがキツくなってきた(当然である)。

そこで、郊外へ引っ越しをすることにした。これで家賃は大幅に下がるのだけど、引っ越しにあたって、ひとつ問題が出てきた。職業が無職では、マトモに家を借りられないのだ。

賃貸住宅を借りるとき、よく「家賃は月収の1/3まで」なんて言われるけど、そもそも無職なので、月収もクソもない。保証会社の審査書類に、年収を記載する欄があるけど、事実通りゼロと書いたら、審査に通るはずがない。

そこで、妻の力を借りることにした。妻は健常者で、正社員である。信用にも問題はない。妻の収入を使ってマンションの審査を通し、妻名義で無事に家を借りることができた。

べつに、家を借りるために結婚したわけではない。ただ、結婚の便益は私にとっても、そして妻にとっても、本当に大きい。

私は、会社をやめてから約1年間、マルっとうつ状態におちいっていて、ほとんどの時間をベッドの上で過ごしていた。食事もとれない、入浴もできない、かろうじて排泄はできる(ベッドで漏らすのはこわい)。そんな状態だった。

しかし、妻が無理のない範囲で、食事や入浴をうながしてくれた。というより、ほぼ介護してくれたおかげで、いまでもなんとか生きている。妻と結婚していなかったら、たぶん孤独死して、腐乱死体になっていただろう。

妻にとっても、結婚の便益は大きかったと思う。3年前に結婚した当初、妻はフリーターだった。ほぼ最低賃金みたいな時給で働いており、毎月が自転車操業のような状態だった。結婚前のデート代は、私がほとんど支払っていたが、それは「男として云々」という話ではなく、単に妻がマジでお金を持っていなかったから。

それが、結婚したことで、妻にとって最低限のライフラインは確保された(結婚してからの家賃や光熱費は、すべて私が払っていたので)。

結婚したからといって、妻の給料が上がったわけではない。結婚後の家計は別だったので、妻の生活がラクになったわけではない。しかし、とりあえず寝床や風呂はちゃんとあり、そのへんで死ぬことはなくなったワケだ。

そのあと、妻はいったん仕事をやめる。もし結婚していなかったら、妻はココで詰むワケなんだけど、結婚していて、私の収入があったので、路頭に迷うようなことはなかった。妻はほんの一月ほどで次の仕事を見つけて、順調にキャリアアップしていった。

こんな感じで、ふたりで結婚して暮らしていることによって、ふたりとも命をつないでいる感じはする。ときには助け合い、ときには持ちつ持たれつ、ときには一方がもう一方に寄生するようなかたちで、なんとか2人で生きている。

いまは、私が無職、妻が正社員というかっこうで、私が妻に寄生している。マンションの審査など、社会的信用が求められることは、すべて妻におまかせしている。妻が正社員でいてくれるおかげで、夫である私も、その便益を享受できる。

結婚、セーフティネットだと思う。もし妻がいなかったら。無職の障害者である私が、東京でひとり生きていくのは、けっこうキツい。生活面での不利益も多いし、社会的信用もないし。妻がいてくれるおかげで、私もさまざまなおこぼれにあずかることができている。

妻にとっても、私と結婚することで得られたメリットは大きいと思う。たとえば、転職する余裕ができたこと。妻がキャリアアップできた要因、7割くらいは、妻の努力によるものだろう。しかし、残りの3割は、結婚して生活環境が整ったことによると思う。

あと、結婚したときの妻には、ちょっとした借金があった。フリーターのままでは完済できそうになかったので、私がそれを肩代わりしたりもしている。借金の利息を払い続けるよりも、私が肩代わりしたほうが、家計単位で見たトータルコストは低くなるので。

愛はあるよ、愛はある。実利の話、カネの話ばかりしてしまってアレなんだけど、ちゃんと愛のある結婚生活を送っている。ただ、結婚したことによる実利、経済的・社会的メリットは、けっこう大きかった。というか、もし結婚してなかったら、たぶん私も妻も、お互いロクな人生になってなかった。

もし、結婚していなかったら。私は私で、心身を壊して、会社をやめて、家も借りられず、ジリジリ貯金を削っていって、最終的にはまた岐阜の実家へ出戻るか、それか都内でのたれ死んでいたと思う。

ひとりでちゃんと生活してる人はすごいし、うらやましい。私は、もともとそれほど結婚願望がなかった。ひとりでいるのが好きだし、わりとなりゆきで結婚したんだけど……結果的に、結婚は私にとって、生活の大きな受け皿になった。結婚してなかったら、私はきっと死んでいた。

もし、結婚していなかったら。妻は妻で、貧乏フリーター生活から抜け出せられずに、借金の利息を払い続けて、生活がダメになるまで食うや食わずやの生活を続けていただろう。「恒産なければ恒心なし(安定した収入がなければ、安定した精神はない)」と言うけど、結婚前の妻、金銭的にも精神的にも、とにかく余裕がなさそうだった。

妻も、結婚によって、人生の基盤を固められている。わが家の結婚生活において、妻が(働いていたころの)私という資本を上手く使ったことで、妻の人生はステップアップした。とくに転職後は、趣味や遊びに打ち込む余裕が出てきたようで、以前よりはるかに楽しそうにしている。とてもいい。

我々夫婦は、お互いに(総合的な)生活力が低いので、助け合わないと生きていけない。そりゃ、私だって妻だって、ひとりでちゃんと生きていける甲斐性があればいいよ……だけど、ないものの話をしても仕方がない。

結婚することで、お互いになんとか死なない程度の生活を手に入れられた。われわれ夫婦は、結婚することで、おのおのにとって最低限の幸せや豊かさを享受できている。そういう意味で、この結婚は福祉である。

結婚によって、生活のリスクを低減することができる。仮に私が仕事をしていなくても(私はいま、実際に仕事をしていないのだけど)、妻が働いているかぎりは生きていける。仮に妻がまた仕事をやめても、そのときはまた私が働けばいい。ひとりでは生きていけないけど、ふたりでなら生きていける。

そのために、生活をある程度までミニマルにする必要はあるけど……どちらかがダメになっても、どちらかが大丈夫なら、ふたりで生きていける仕組み。一方に余剰があれば、もう一方がそれを利用できる仕組み。夫婦の相互扶助で、最低限の幸福と豊かさを担保する仕組み。結婚は福祉。

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