夏がキライ

04.じんせいのこと
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3日前、8月5日に、35回目の誕生日をむかえた。ことしのこの日は、3回目の結婚記念日でもある。わが家の夏は、おめでたいことが重なっている。

ところが、私は夏が大キライである。両親に向かって「なぜ夏に生んだんだ!」と抗議したいくらいキライである。なぜキライか。理由はひとつ、暑いから。

私は、岐阜県の県北にある飛騨高山(高山市)、標高の高い雪国で育った。飛騨高山の夏は、それほど暑くはない。夏の気温は30℃前後とけっして涼しくはないけど、湿気がすくないため、とても過ごしやすい。エアコンを設置している家庭もすくなく、扇風機だけで夏場をしのぐことができた。

2015年の4月に、飛騨高山から東京都内へひっこした。東京でむかえるはじめての夏、私はその暑さに仰天した。まず、気温が高い。高山市に住んでいたころ、気温はMAXで32℃くらいだったけど、東京の夏はアベレージで32℃を超える。暑すぎる。

湿気もひどい。高山市に住んでいたころは、気温は高いけど湿度が低いので、汗をかいてもすぐ乾いていた。しかし、夏の東京では汗が乾かない。湿度が高すぎる。一度外でベットリ汗をかいてしまうと、家に帰ってシャワーを浴びるまで、身体も衣服も汗だくのまま過ごさなければならない。キツすぎる。

上京してから就職した会社では、スーツ・ネクタイの着用が義務づけられていた。真夏のクソ暑い日でも、ジャケットをはおって出勤しなければならない。家を出た瞬間、身体じゅうから汗が吹き出してくる。駅まで歩く道のりで、すでに汗だくになっている。

汗だくの身体のまま、高温多湿の満員電車にブチ込まれる。そして小一時間蒸されてから会社の最寄り駅に着いて、そこからまた焼くような日差しとサウナのような気候のなかを会社まで歩く。会社に着くころには、全身びっしょり、湯気が出そうなほどゆだっていた。

上京して夏が来て、連日連日ド根性蒸し風呂出勤を続けていたら、すぐに体調を崩した。カゼをひいて、高熱がおさまらなくなって、一週間ほど寝込んだ。東京で就職してから退職するまでの3年間、毎夏ひどいカゼをひいた。夏の風物詩のように体調を崩した。

10年くらい前、私は銀行に勤めていたけど、当時はまだクールビズがそれほど普及していなかった。そのせいで、夏場でも客先を訪問するときはジャケットを着用するのが暗黙の了解だった。

夏場のジャケット着用、人権侵害だと思う……暑いし、汗をかくし、体力を消耗するし、息切れするし、見た目が悪いし、クリーニング代はかさむし……いいことなんて、ひとつもない。最近はクールビズが当たり前になってきて、固い仕事の人たち、たとえば役所や銀行の職員の人たちも、涼しげな格好で仕事をしている。大変いい流れだ。

2年前に会社をやめて、夏のスーツからは解放された。しかし、あいかわらず暑いの・汗をかくのは苦手で、夏はできるだけ外出したくない。最近も、最低限の買い物以外では外出しないようにしている。その最低限の外出でも汗をかくので、たいへんイヤイヤ外出している。

きょうも、誕生日と結婚記念日のお祝いのために、ちょっといい目のお店でランチをしてきたのだけど、家→店→家と、いっさい寄り道をせずにランチだけして帰ってきた。夏は外出したくない、汗をかきたくない。

スポーツなどで汗をかくのは、気持ちいい。サンサンと照りつけるおひさまの下、玉のような汗をひたいからほとぼらせて、めいっぱい身体を動かす。コレは最高だろう。子どものころ、野球をやっていたときは、夏場の練習で汗と泥にまみれるのが大好きだった。

ただ、かつての私のようなサラリーマンは、クソ暑いなかムダにスーツを着て、ジワジワと汗をにじませ、衣服が湿ったまま一日を過ごさなければならない。コレは最悪である。そして、いまでも汗をかくと、サラリーマン時代の不快な気持ちがフラッシュバックしてくる。

汗はイヤだ……ベタつくし、臭いし、不潔だし、蚊とか寄ってくるし……とにかく汗をかきたくないし、汗をかいた状態のまま過ごしたくない。会社をやめて、ほぼ家で過ごしていると、好きな時間にシャワーを浴びられるのでいい。汗をかいたら、すぐにシャワーを浴びる。毎日3~4回シャワーを浴びる。それくらい汗がイヤだ。

真夏の日、好きなときにシャワーを浴びられる快適さを知ってしまった。この快適さを知ってしまうと、もうもとには戻れない気がする……就職したら、好きなとき気軽に汗を流せなくなるのか……そう思うと、就活にも力が入らない。

というわけで、夏が大キライである。夏真っ盛りに生まれて、夏真っ盛りに入籍したのに、夏が大キライである。

本当は、夏のことをもっと好きになりたい。自分が生まれた季節だし、結婚記念日もあるし、なにより夏は生命力に満ちている。日差しは焼きつくように明るく、セミがうるせえ、草木は青々としげり、虫が大量発生してうっとおしい。夏は「命」って感じがするし、身体の奥底からわきあがるもの、やり場のないエネルギーを感じる。夏、なにかしたい。

なにかしたいんだけど、案外できることはすくない。子どものころは、海水浴に行ったりしてたんだけど、あるとき急に海が怖くなって、海に近寄れなくなってしまった。花火は好きだけど、たまにやけどするので怖いし、後かたづけが面倒くさい。夏祭りは人がおおいのでNG。お化け屋敷は怖いからダメです。と考えていくと、夏にはなにをしたらいいのか、わからないな。

あと、やっぱり汗をかくのがイヤだ……汗は気持ち悪い。それに、汗をかいたままでいると、スーツのサラリーマン時代を思い出してミジメな気持ちになる。もう一度言いますが、真夏のスーツ着用は人権侵害です。

夏というとアウトドアなイメージがあるけど、私は季節が夏ってくるほどインドアになってしまう。とにかく汗をかきたくないので、冷房で適温に調整された室内に引きこもって過ごしている。

ただ、誕生日や結婚記念日のお祝いは、ちゃんとやりたい。だって、誕生日も結婚記念日も、一年に一回しか来ないんですよ。なんかしないと、さみしいじゃないですか。記念日をちゃんとお祝いするためには、やむをえず外出するしかなく、外出すると汗をかいてしまう。

汗をかくこと以外、夏のことは大好きなんだ。陽気が気持ちいいし、身体の調子もよくなる。夏が旬の食べ物がおいしいし、打ち上げ花火がキレイだし。虫の鳴き声が美しいし、夜の空気に風情がある。しかし、「汗をかく」この一点だけで、私にとって夏は最悪になっている。

夏、私は夏のことをもっと好きになりたいと思っているので、夏のほうももっと私に妥協してほしい。「暑いのをやめろ」「気温を下げろ」とは言わんから、せめて湿度をなんとかしてくれ。

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