千代に八千代に(第2回笹井宏之章 応募作)

07.趣味のこと
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♥銀行を襲っちゃおうぜ阿佐ヶ谷の四畳半から始まるSUMMER

♠イヤホンが片っぽどっかいっちゃって去年と同じ夏がまた来る

♥キャンバスに顔を描いてる 誰のものでもない顔をたくさん描いてる

♠グランドの日陰で伸びる雑草にムッソリーニと名前をつけた

♥母が首括って父が腹切って流れた川から産まれる私

♠もういいかい?まだだよまだまだまーだだよ生徒の群れに車が突っ込む

♥厚ぼったい唇に塗ったグロスを指で拭って歩く二時半

♠学校も広場も道もこの僕もみんなそろって誰かのもので

♥美しくデフォルメされた世界地図から無視される私の故郷

♠ふるさとの名前を呼ぶな 新宿の南改札シケモク美味い

♥雨に濡れ湿るサンダル ビルケンのロゴから匂う腐った小夏

♠本物の男にいまだ憧れる 朝はご飯を吐くほど食べる

♥オレンジのサコッシュすてき正体をあらわせ魔法使いの弟子め

♠十二時に魔法は解けるそのあとは炊事洗濯風呂も磨くよ

♥新しい髪型がよく似合ってて呪いが解けた王子様みたい

♠バリカンが当たる 細かな振動が頭に響く 頬紅らめる

♥新しいシャツの絵柄はこの街の絵柄 あなたが知らない絵柄

♠白くないシャツを着るのは慣れなくて人気のない道選んで歩く

♥「バカだね」と笑うあなたの首元に飛び蹴り バカにするな笑うな

♠アイドルが好きなあなたにアイドルの話をすると怒るのふしぎ

♥ニセモノの指輪をはめたマネキンと結婚するの、私はハタチ!

♠教科書に載ってないこと人間の女の体は柔らかいこと

♥二十メートル手前から助走つけ ホップ ステップ ジャンプ 抱いて

♠夏祭り 背中に緩く結ぶ帯 脱げない浴衣 嵌まらないゴム

♥銭湯は嫌い裸を見たくない だけど裸を見せるのは好き

♠「これ捨てていい?」元カレの歯ブラシをつまんで捨てる不燃ゴミの日

♥鶏肉が腐った臭い キッキンの隅に漂う終わりの臭い

♠キッチンのシンクに積もるストロングゼロの数だけ届かぬ祈り

♥泣いている人を憐れむ優しさをあてにしている玉ねぎを切る

♠刺青を撫でると笑う右肩に彫られたツバメがつられて笑う

♥浴室で全裸になって花束を抱えて笑う セックスしよう

♠浴室で時代遅れの一眼を抱えて咽ぶ セックスするな

♥税金を払え ポストに赤色の封書が届く八月の末

♠何度目の朝か指折り数えては戻らない朝 あゝ金がない

♥そばにいてくれればいいわ 熟れすぎたトマト分け合うふたりの夜更け

♠わたくしを※※※※ください 細い背が吐き出す呪い溶けてゆく朝

♥死んじゃえば 手首に浮かぶ十字架を握って祈る 生かしてください

♠誰が君を傷つけたのか僕にだけ教えて そいつ殺してやるよ

♥手の中のボタンを押した足許の床が崩れた 二人は死んだ

♠情念が強すぎるからわたくしは旧姓捨ててあなたと走る

♥どこ行くの知らないだからついてきて 手を引き走る夜の環七

♠土埃 雨 排気ガス 夜 汗と制汗剤の混ざった匂い

♥掌のオオミズアオを握り潰す 蝶と蛾との違いを想う

♠バスを待つ この路線の運行は既に終了しました 待つ

♥「人生ってなんだろ?(はてな)」わけわかんないまま笑顔で死んで♥ (はーと)

♠「どーなっちゃうの私の人生?(はてな)」どうにもなんねえよバカ♥ (はーと)

♥学校へ行けよ教師はクズばっかだし生徒のガキもバカばっかだし

♠卵白を置き去りにして卵黄は固まる 今日の始発で帰る

♥キッチンの窓より差し込むひとすじの光 暮らしの陰を描いて

♠あゝ誰も彼も社会をやりたくてまた縊られる千代に八千代に

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