「世界は変えられない」と思っている人たちへ─『ガチガチの世界をゆるめる』

04.じんせいのこと
この記事は約5分で読めます。

ひょんなことから、百万年書房という出版社の北尾さんに誘われて、本づくりのお手伝いをさせてもらうことになった。本づくりのことはよく知らなかったけど、とりあえずやってみることにした。

タイトルは『ガチガチの世界をゆるめる』、著者は澤田智洋さん。広告代理店でコピーライターをやっていて、「世界ゆるスポーツ協会」の代表を務めている。「ゆるスポーツ」生みの親である。私が澤田さんにインタビューをして、お話をうかがいながら、本をつくりましょう。そういう流れだった。

一応「インタビュー」ということだったけど、私にはインタビュー経験がない! 経験がないなりに、ちゃんとやろうと思い、澤田さんのことを調べた。

澤田さんに関する情報で、インターネットにのっていたものは片っ端から目を通した。過去のインタビュー記事、YouTubeの動画、世界ゆるスポーツ協会のウェブサイトなど、見れるものは全部見た。1週間しないうちに、澤田マニアになっていた。

インターネットで知った澤田さんの感想、「すごい人」だった。帰国子女で、コピーライターで、世界ゆるスポーツ協会の代表で、あたらしいスポーツをどんどん開発してて、「ゆる」の伝道師で、活躍はスポーツだけにとどまらなくて。こんなすごい人に、私がなにを聞いたらいいのかわかんなかったけど、とりあえずインタビューしに行った。

澤田さんにはじめてお会いしたときのこと、いまでも覚えている。私は定刻よりすこし前に百万年書房のオフィスについて、ガチガチに緊張しながら澤田さんを待っていた。定刻になって、澤田さんがやってきた。

澤田さんは、軽く息を切らせていた。「階段を見ると、ダッシュで登っちゃうんですよね」そんなことを言っていた気がする。

澤田さんは、デカい荷物を持っていた。自己紹介もそこそこに荷物を開けて、パソコンのキーボードみたいな楽器(TYPE PLAYER、第6章 ニューマイノリティを探そう に出てくる)を取り出し、「これ、あたらしく作ったんです」と言った。本当にうれしそうな顔をしていた。

澤田さんとは、6回インタビューをさせてもらった。一回2時間くらいなので、合計12時間もお話をさせてもらったことになる。

はじめは、まず本づくりのことが頭にあったので、なんとなくだけど筋道を立てて話をしようと思っていた。3回目くらいまでは、ワリとキチンとできていた気がする。澤田さんはすごい人なので、けっこう緊張してたし。

さっき澤田さんのことを「『ゆる』の伝道師」って書いた。澤田さんはたしかにすごい人で、話していると本当に心がゆるくなってくる。4回目くらいから、私の心もゆるゆるになっていて、インタビューというよりカウンセリング、私が澤田さんの話を聞かせてもらわなきゃいけないのに、私の話を澤田さんに聞いてもらう、みたいになっていた。

当時の私は(いまもだけど)定職についていなくて、しかもキツめの精神障害を抱えており、今後の生き方に悩んでいた。かなり深刻に悩んでいた。生き死にを考えるくらい悩んでいた。

澤田さんにインタビューしているときも、ときおり精神的に落ち込んだまま行ってしまったことがある。そういうとき私は、インタビューのあいまあいまに「これからどうすればいいんすかね~」「もうムリっす~」みたいな話を澤田さんにしていた。

そういう話をすると、だいたいの人は「なんとかなるよ」みたく曖昧にはぐらかすか、それか説教をしてくるのだけど、澤田さんは違った。澤田さんは、自分の経験や知識や思想、それも百科事典くらいありそうな分厚い「澤田智洋」のなかから、私に合いそうなメソッドを引っ張り出してきてくれた。

たとえば私が「障害なんてない、普通の人生がよかったナ~」と言ったとき。澤田さんは「いやでも普通もキツいっすからね~」という話をして、「普通障害」という言葉を教えてくれた(第8章 みんな普通で、みんな普通じゃない)。

私が「毎日閉塞感があってキツいっす」と言えば、澤田さんは「じゃあ、ゆるめましょう!」と言って、「ゆるめる」の具体的なやり方を詳しく教えてくれた(第4章 「ゆるライズ」してみよう)。

全6回・合計12時間のインタビューが終わるころには、私を苦しめていた閉塞感、「もう人生おしまいだ」「死にたい」みたいな諦めはキレイに消え失せて、「なんとか生きていけるだろう」という晴れやかな気持ちになっていた。あまりにも気分が晴れやかで、澤田さんにお金を払ったほうがいいんじゃないかという気持ちにすらなった。

先日、見本を送ってもらったので、すぐに読んだ。本書を読んでいると、まるで澤田さんと対話しているように、インタビューのときのように心がゆるくなっていくのを感じる。

澤田さんがTwitterで「(本書に)ぜんぶ出し切った」と書いていた。たしかに、この本は澤田智洋さんそのものだ。テキストを通して、「それ、『ゆる』でなんとかなるんじゃない?」と澤田さんが語りかけてくる。

澤田さんは、たぶん「世界は変えられる」とマジで信じている。普通はそんなこと思わない、大人になるまでにどっかで諦めるでしょう。だけど、澤田さんはマジで世界を変えられると思っていて、そして変えようとしている。

というか、実際に世界を変えている。コピーライターとしての仕事もそうだし、ゆるスポーツ、ゆるミュージック、Techo School、切断ヴィーナスショー、特業展、#FuTooなど、さまざまな活動を通して、ガチガチに固まった世の中の「当たり前」をゆるめている。

そして、澤田さんの「世界は変えられる」という想いは、伝染する。インタビューを始めたころの私は、挫折やら絶望やらにまみれて「もうダメ」みたいな感じだった。それが、澤田さんとのインタビューを終えるころには、「私にも、なにかできるかも」と思えるようになった。

澤田さんにインスパイアされて輝き始めた人、老若男女健障問わず、きっとたくさんいる。私もそう、そうありたいと思う。

この本に関わったひとりとして、ひとりでも多くの人に澤田さんの言葉を届けたい。澤田さんの「世界は変えられる」という想いに感染してほしい。ガチガチに凝り固まった息苦しい(生き苦しい)世の中で、みんな苦しんでいるだろう。本書を読めば、きっとみんなが生きやすくなると信じている。

タイトルとURLをコピーしました